園長よりひとこと②
園長 東口房正
~お茶碗と左手~
昔、小笠原流の当主に京の宮中でお膳が出されました。どんな食べ方をするか興味津々の
公卿たちがのぞき見しているのを察した当主は、飯に汁をぶっかけ、香の物をのせてかき込
んだエピソードがあります。公卿たちは荒っぽさにあきれ冷笑しましたが、箸をみるとわずかに
5ミリだけ汚れていて驚いたそうです。それでも正座をしてお茶碗を持ってかきこんでいた姿が
想像できます。
ご飯を食べるとき、左手は遊んでいませんか。外食のおり、行儀の悪い大人が目につきま
す。犬食い、肘つき、足くみなど・・・。お父さんお母さんは大丈夫ですか?食べ方は見事に子ど
もに伝染します。
左手は常時お茶碗を持って、おかずを受け、お汁やお茶を飲むときだけ置く、という食べ方
ができていないようです。ただ慣れ親しんだ楽な食べ方を修正するのは大変な努力がいりま
す。そこで低いテーブルやお膳などを使うと、口と食べ物の距離が遠いせいか、犬食いや肘つ
きはできません。姿勢も良くなりますので、一石二鳥です。
~炬燵のススメ~
冬場の室内は暖かすぎていませんか。つい大人にとっての快適な暖かさにしてしまいがちで
すが、動きまわる子どもにとっては暑いかもしれません。暖房の効きすぎた建物などは、大人
でも気分が悪くなることがありますね。
ただ大人でも暑がり寒がりがいるように、子どもにも個人差がありますので一概には言えませ
んが、できれば室内全体を暖めるよりも、コタツなどで体の一部分を温めるほうが暖かさを感
じていいかもしれません。換気もしやすい上に家族が一か所に集まる副産物もあります。
~幸せな子どもたち~
江戸時代の日本の子どもたちは、子どもらしく遊び、大切に扱われ、育てられて世界中で一
番幸せである、と訪れた外国人に評されています。おそらくどこにいても周りの大人から適度
に叱られ、多少の怪我なぞなんのその、自由奔放に遊んでいてもあたたかく見守られていたか
らでしょう。
いい子ども社会をつくるのは、まわりの大人の責任であり義務でもありますので、安全にはつ
らつと遊べる環境になることを、年の初頭に願うこととします。
~育ちにあわせて~
教育改革が世間をにぎわしています。教育には、適切な時期と方法が求められるべきでしょ
う。人が育つ時間軸において、いつ・なにを教え、考えさせるかが必要だと思います。
人格形成をはぐくむ時期に英数などを教えるのは、基礎建築をしないでビルを建てるのと同じ
くらい危ういことで、基礎体力・社会性・表現力などが欠如しかねません。やりなおしが利かな
いことですから、周りのおとなが「今なにを」教え考えさせるか、しっかり考えて育てたいもので
すね。
~大切な時間~
「時は金なり」という言葉があります。与えられた時間は万人同じなので、無駄なく過ごすよう
言ったことわざです。さてその無駄な時間というのは一般的にのんびり、ボンヤリしている姿を
思い浮かべますが、それが無駄だと思われますか?
子どもたちにとってはこの「何もしない」言い換えれば「自分の頭の中で動いている」時間がと
ても貴重です。おとなでも余裕のあるときでないといいアイディアなど生まれませんよね。子ども
の中にあふれんばかりにあるファンタジーの世界も、その時間があるからこそ思考力想像力
がはぐくまれ、頭脳の成長に一役かっています。
体は動かしてなくても、「何もしないことをしている」と考え方を変えていただいて、「ゴロゴロし
てないで何かしなさい」は禁句としましょう。
~おりこうさん~
個人差はありますが、概ね4歳を過ぎると親に「いいところ」を見せようと努力する姿がみられ
ます。頑張っている態度であったり、すごいことをした報告であったりして、親としても楽しみの
一つになってきますよね。
子どもの自慢、として受け止めている間はいいのですが、大人にとっての良い子像を求めて
しまうことがあります。そうすると子どもは親の期待に応えようとして、出来事の一部でしかない
-自分に都合の良い部分-だけを報告することが起こります。
向上心をくすぐる励ましや質問は、子どもにとってもプラスになりますが、過大な期待やプレッ
シャーは、他人のせいにする土壌のもとになりかねません。出来事の全体を話せるように余裕
を持って聞く態度も必要かもしれませんね。
~運動会~
運動会の季節がやってきます。子どもたちが張り切った姿を見せてくれるのを楽しみにされ
ていることと思います。鼓隊パレードからはじまり、駆けっこ・表現・競技・組立体操の中で、得
意満面の表情をしてくれることでしょう。保護者の皆様には今年もたくさんの拍手と声援をお願
いするとともに、目の前で行われる臨場感を重要視していただき、ビデオ撮影を第一目的にせ
ず、周りの方々の迷惑にならないよう観覧のマナーをお守りください。
~外国語~
先日、語学は幼児期から、という意見を否定しましたが、発音は別です。決して教える必要は
なく、歌詞や映画で耳に入れておくだけで大丈夫です。子ども本人が気に入った曲などがあれ
ば、繰り返し聴けるようにしてあげれば万全ですね。そのうち耳で学習して口ずさめるようにな
るでしょう。意味はあえて分かる必要はありませんし、いつの間にか外国語独特の発音もでき
るうえに音感もついて一石二鳥です。お試しされませんか?
~幼児の教育~
一般的に教育というと、教室などで机を並べて黒板に向かっている姿が目に浮かびます。一部
の園でも、英語や算数を座学で教えているところもありますね。
さて幼児期において必要な教育とはどのようなものでしょう?語学は幼児期から、という意見
も耳にしますが、人格形成や幅広い対応能力の育成、生きるうえでの知恵などの基礎部分を
作る時期だと思います。
この園ではご存知のとおり、知識ではなく、知恵、それも自分で会得することこそ将来の礎と
考え、日常体験によっての体得を目指しています。
~こいのぼり~
5月が近くなると町なかであちこちに空をおよぐ姿が見られます。黒・赤・青の三匹に5色の
吹流しが一般的ですね。以前は当園でも同様のこいのぼりを掲げていましたし、金太郎がまた
がった仕様のものもありました。一昨年からちょっとかわった色のこいのぼりになっているのを
お気づきだと思います。色彩にこだわりをもって選んだ彩雲錦瑞祥という瑞雲と邪気払いの薬
玉を配し、ウロコに見立てた青海波の模様が艶やかなものです。
園児みんなの成長を願っておよぐひと味違ったこいのぼり、一度じっくり見ていただきたいと
思います。
~意欲の素~
4月から子どもたちは新しい環境を体験します。一日のうちの数時間ですが、意欲的に過ご
せるかどうかは「朝の気分」によって変わってきます。
さてその朝の気分、睡眠が足りていると機嫌よく起きられますよね。また幼稚園に出かける
まで、時間に余裕を持って快適にすごせれば充実した日になると思います。朝はあわただしい
ものです。その朝の時間帯に余裕を持つことは難しいかもしれませんが、新年度のこの機会
にご家族もあわせて少し余裕のある「朝の時間」をすごしてみるのはいかがでしょう。